公開シンポジウム・課題研究

公開シンポジウム 「学校教育の変革主体としての教師」(無料)

日時

9月30日(土)15:45~18:00

趣旨

近年、学校教育の変革主体としての教師を表現する言葉として、「教師エージェンシー」が用いられている。その意味は論者によって異なるが、G.ビースタ(Biesta)らが提唱するエコロジカル・アプローチは、教師エージェンシーを個人の能力として捉えるのではなく、個々人の能力と環境条件の相互作用の結果として捉える点に特徴がある。

 翻って、教師教育という時、我々は教師の「資質」や「能力」を、あたかも個人の持ち物であるかのように捉え、それを増大させることをイメージしているのではないか。近年における教師教育政策や制度改革も、個々の教師の「資質」や「能力」を育てるという考え方の束縛から逃れられず、協働することさえも協働する「資質」や「能力」のように扱っているように思われる。

 「教師エージェンシー」へのエコロジカル・アプローチや「同僚性」「専門家共同体」「専門家の学習共同体」「組織学習」といった理論には、「資質」や「能力」をそのようなものとして捉え、教師の「主体性」を個人へと還元してしまう前提を再考し、その限界を明らかにするための契機が含まれている。エコロジカル・アプローチによれば、子どもや同僚、保護者、地域の声を聴くことと、教師エージェンシーを高めることは相即的な関係にあることになる。こうした観点から、本シンポジウムでは、 G.ビースタの教師エージェンシーに関する講演を踏まえ、現代学校教育の変革主体としての教師を探究したい。

内容

【シンポジスト】ガート・ビースタ(メイヌース大学、エディンバラ大学・会員外)
【指定討論】仲田 康一(法政大学)
【コーディネーター 】勝野正章(東京大学)

申込

こちらからお申込みください。

課題研究Ⅰ 「個人化された学習の時代を超えて」

日時

課題研究Iは9月23日(土)にオンライン開催し、それをオンデマンド配信する予定です。

大会当日、配信部屋は設けません。

趣旨

変容する学校教育を前にして、教師教育はどのような展望を抱くべきか。それを検討するのが本部会である。

この主題に即して、これまで、①「学校教育の変容」を、社会全体の動向の中で把握する② 現在進行している教育政策、特に、個別最適化」という大きな転換について、その意義と課題を検討する という課題について問題提起し、議論を重ねてきた。その中で、この「個別最適な学び」が、新たな学びを切り拓くと主張される一方で、個人化の進展とそれがグローバル経済のなかでの人材養成に水路づけられる危険性を示してきた。

本年度は最終年度に当たり、こうした議論を踏まえ、「公教育」の重要な使命が「民主主義」的価値をはぐくむことであることを確認し、教員養成・教師教育でそれをどのように展開していくかについて報告を行う。

その際留意しなければならないことは、社会を席巻し、教育において支配的になりつつある<新自由主義的価値>(=個人の能力を高め、それを人材として供給すること)の中で、教師自身が育ち、生活していることである。したがって、そうした「当たり前」で「所与のもの」となっている意識や価値を、どのように相対化できるかが重要となろう。

学ぶことで人々が競争し、選別され、相互に切り離されて操作可能な人材としてあらわれるのではなく、自分と未来の社会に寄与するような学びを創造できるよう、教師に必要なものは何か。

教師教育を考える時、①教師個人の資質能力に焦点を当ててきたことの問題、②「一人一人を大事にする教育」という名でいつの間にか、排除される特別支援の問題などについても、改めて検討する必要があろう。現代社会における能力主義(あるいは業績)の問題、教師の職業集団の問題、教師の専門性・専門職性について問題提起し、「教師教育」の在り方について考える。

内容

【報告者】

報告1:教師の同僚性の意義  鈴木 悠太(東京工業大学)

報告2:個別最適化という排除  小國 喜弘(東京大学)

報告3:「公教育の変容」と教師の専門職性を考える  油布 佐和子(早稲田大学)

【司会】

柏木 智子 (立命館大学)

課題研究II 大学における教職課程の「グランドデザイン」

日時

10月1日(日)14:45~17:45

趣旨

課題研究2「大学教育と教師教育」では、大学における教員養成のあり方について学際的・総合的な検討を行い、学術的基盤に基づいて日本独自の教員養成モデルを構築し、政策提言を行うことを目的とし、3年間わたる研究活動を展開してきた。

 具体的には、教員養成の「制度」と「カリキュラム」という二つの観点から、理論的および実証的アプローチを統合的に推進することを通して、大学における教員養成の理念や実態を明らかにするとともに、そのシステムの再構築に向けて、日本における教員養成の新たな高度化に向けた将来像を「グランドデザイン」として描くことを目的とした。とりわけ、大学における教職課程についての基本的な考え方を確認するとともに、その理念を現実化するためのカリキュラムや制度のあり方について、「多様性」と「共通性」をともに重視しつつ検討を深めてきた。また、その研究プロセスにおいては、有識者へのインタビューやより多くの関係者を対象とする質問紙調査を実施するとともに、学会内外に広く意見を求めることを目的とした公開研究会を複数回にわたって開催することなどによって、研究成果の妥当性について検証を進めてきた。

本研究大会では、われわれの研究の最終成果を「グランドデザイン」として提案するとともに、識者からのコメントをいただきつつ、参加者と活発に協議を行い、大学における教員養成の今後のあり方について、さらに検討を深めていきたい。
 なお、課題研究2が母体となって申請した科学研究費基盤研究Bが採択され、2023年度がその最終年度になる。これまでの研究プロセスと成果については下記のHPで公開されているので、参照されたい。

https://projectresearch2.jsste.jp/

内容

【コーディネーター】 浜田博文(筑波大学)

【報告】 鹿毛雅治 (慶應義塾大学) / 牛渡淳(仙台白百合女子大学)/岩田康之 (東京学芸大学) / 勝野正章 (東京大学)
【指定討論 】 三石初雄 (東京学芸大学)

課題研究III
「多様な教職ルートが教師教育に問いかけること:各国の類型化と日本の位置」

日時

10月1日(日)14:45~17:45

趣旨

第10期の課題研究Ⅲ部(国際比較・交流)は、多様な教職ルート(教壇に立つためのルート)に焦点を当てて、国際比較研究を進めています。第31回大会ではアメリカ・ノルウェー・中国・ドイツの多様な教職ルートの実態を議論し、第32回大会ではイギリスとオーストラリアの教員不足対応の実態を事例に、多様な教職ルートの背景の特徴を検討しました。第33回大会では、課題研究Ⅲ部でこれまで議論してきた各国の状況を整理し、多様な教職ルートの意味を考えてみたいと思います。

これまでの研究を通して、教員になるためのルートが複数あるという状況が多くの国で共通していることが明らかになりました。しかし、多様な教職ルートの構造を見ると、例えば「主流」としての教員養成がありながら、緊急的に必要な場合に備えた仕組みがある場合や、「主流」の教員養成では質的・量的な教員不足に対応できないことから、ある種の「傍系」が確立している場合等、いくつかの類型が確認できます。そこで、各国の多様な教職ルートの構造を類型化することを通して、世界的な動向を整理していきます。他方で、それぞれの国で多様な教職ルートが存在する背景には、単なる量的な教員不足というだけではなく、各国における学校教育や社会環境の変化への対応といった側面もあることが見えてきました。そうした各国の差異性に着目し、世界的な動向の背景にある各国独自のコンテクストも探っていきます。以上の各国の分析結果を踏まえた上で、多様な教職ルートの意味を考えるとともに、日本の教師教育の制度・実態を国際比較の枠組みから定位することを試みます。

内容

【司会者】佐藤仁(福岡大学)、矢野博之(大妻女子大学)

【報告者】小野瀬善行(宇都宮大学)、北田佳子(埼玉大学)、佐藤仁(福岡大学)、張揚(北海道大学)、辻野けんま(大阪公立大学)、中田麗子(信州大学)、原北祥悟(崇城大学)

若手研究者育成支援部 「論文作成支援セミナー」

日時

2023年10月1日(日)13:00~14:30

趣旨

本学会年報への投稿・掲載を目指している会員の皆様を対象に「第5回論文作成支援セミナー」を開催します。今回は鹿児島大学の高谷哲也会員を話題提供者にお迎えし,「よい実践報告が学術的に意味を持つとは?/研究論文と実践論文の二極化のように捉えられている現状をどう考えるか?」について皆様と語り合います。話題提供の後,若手研究者育成支援部のメンバー等と参加者の小グループによる「分野別学習会」を開催する予定です。ハイフレックスで行いますが,対面開催の強みも活かしたワークショップ型の会とします。

対面参加,オンライン参加に関わらず事前申込をお願いします。
大会当日は,大会参加費を支払済の方で,飛び込みによる対面参加のみ受け付けます(オンライン参加の場合は9月22日までにお申し込み下さい)。
なお,飛び込み参加の場合,当日のグループワークでは必ずしもご希望通りのグループとならない可能性もあります。この点,あらかじめご了承下さい。

内容

【話題提供者】
高谷 哲也(鹿児島大学)

【進行(予定)】
①開会挨拶+主旨説明:5分
②話題提供:20分
③話題提供を受けての小グループでの交流:40分
④ブースリーダーによる報告・全体協議:20分
⑤閉会挨拶:5分